「大阪北部地震
■大阪北部地震 倒れたブロック塀に女児が下敷きに…
- 平成30年6月。震度6弱の大きな地震が大阪北部を襲いました。
地震が起きたばかりの時は被害の全容がなかなか見えてきませんでしたが、徐々に被害の内容が報道されるようになりました。
- その報道の中で、高槻市の小学校のプール沿いにある長い塀の上部の部分、後で積み増しした部分のブロック塀が倒れ、小学校4年生の女の子が犠牲となる痛ましいニュースが流れてきました。
- 幼い子供を襲ったこの悲しい出来事に心が痛みます。
このような被害が今後できるだけ起きないよう、確固とした対策がなされることを強く望みます。
- このニュースを観た瞬間に、このブロック塀の施工は建築基準法に違反しているのではないかと思いました。
- コンクリートブロック塀は、3.4mごとに控壁を設置しなければなりません。
(高さの5分の1以上の長さ「建築基準法施行令」、且つ、40㎝以上「日本建築学会基準」の長さ)
- 控壁があると無いでは、揺れに対しての耐性は全然違います。
- 学校側は素人ですが、市は専門の担当部門があるので把握していなかったのはあり得ません。
- 斜めに倒れている方のブロック下方の写真をよく見ると、鉄筋は一応入っているようですが、嵩上げだから縦筋は単なる「差し筋」です。
- 本来、基礎部分から立ち上がっていなければならないのですが、倒れた上部のブロックは、後施工の増積みなので、下部既存塀の部分に少しだけ縦筋の下部を差してあるだけだと思います。
- 最低でも、鋼柱・帯鋼・控えアングル鋼等で下から補強をしていれば、倒れなかった可能性も高い。
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(なお、この図では控壁は図示していません)
- なお、古いブロック塀なので、建築基準法違反ではなくて、改正による「既存不適格」と思っている方もけっこういるようですが、そうではありません。
- 下のブロックは1.9メートル。積み増しした倒れたブロックは1.6メートル。合計3.5メートルの高さがあることから、昭和56年6月施行の新耐震基準以前の旧基準(3メートル)でも違法になりますので、「不遡及の原則」には当たらないと思われます。
下の既存塀がコンクリート製の擁壁(2m以下)であっても同じです。
- ※なお、塀の高さは、下部地盤面から塀の一番上までをいいます。
上部地盤面ではありません。もちろん、平均地盤面などではありません。
- それと、擁壁などと違い、補強コンクリートブロックは土圧には対抗できない(土留め等の耐性はない)ので、土かぶり・上部地盤面は400mm・2段までとなります。
その場合も、ブロックの穴にコンクリート、あるいはモルタルがすべて充填されていることが必要です。
- また、マスメディアの報道内容が不確かなので、下部既存塀が実際にはどのような構造なのか、基礎の部分の構造はどうなっているのか。
元々が1.6メートルものブロック(8段)を積み増しする2段擁壁の計画ではなかったはずであり、既存塀の基礎を含めた構造そのものも無理があるかも知れませんし、そもそも既存の塀に1.6メートルもの高さのある積み増しのブロック塀を造る。しかも控壁無しでというのは話にならない。
- ※その後に沢山流れてきたニュースを観ると、はっきりしたことはニュースの内容では分かりにくかったですが、下部既存塀は擁壁なのかもしれません。上記図を参考にしてください。
- なお、下部の塀が擁壁の場合、高さが2mを超えていない1.9mですから、建築基準法・都市計画法・宅地造成等規制法・津波防災法、並びにがけ条例等、
一部の基本的な規制を除き、多くは法の適用範囲外のものともいえます。
- 「既存不適合」如何に拘わらず、定期的な検査でこのような塀を問題としなかった自治体の責任はとてつもなく大きい。
- 明らかな行政の怠慢であるし、それはこの地域に限らない。全国すべての地域が似たような状況だと思います。
- 早急な対策が必要です。幼い子供の犠牲を決して無駄にしないでほしい。
- 控壁の間隔は前述の通り、3.4メートル以内(実際にはブロック8丁の3.2メートル)ですが、両端は0.8以内に必要です。(端角が折れ曲がっていない場合)
- 控壁の高さですが、本体の高さより45センチ以内の下がりまでとされていますので、2段分までなら一応はOKということになりますが、構造耐力的には1段下がりくらいにしておいた方がいいのではと思います。
- また、「2段擁壁」は警戒且つ、十分検討してからの施工をしなければなりません。
- ※なお、2mを超える擁壁は「工作物」となります。この場合、工作物としての確認申請をしなければなりません。
- 工作物となる比較的規模の大きな擁壁などの場合、上記で記述してきた塀とは、また少し違った概念ともなりますし、違う規制等が絡んできたりもします。
それらのことは、別記事にて…