筋交い その3
■筋交い その3
当サイトの記事の中で皆様の関心の高い記事のひとつが「筋交い」です。
そこで、タイトル「筋交い その3」として、筋交い・面材等での耐力壁のことや、耐震のことをもう少し掘り下げてみたいと思います。(おさらいの意味も込めて)
まず、当サイトの「筋交い」の記事を読んだ方に勘違いされないようにもう一度繰り返しておきたいのが、ダイライト等の面材のことです。
最初の記事で書いてある通り、「面材だけで」家の耐力を保とうという考え方に当サイトでは疑問を提起しているのであって、「面材そのものを否定している」訳ではありません。面材も非常に有効な資材ですし、既存の建物を補強するのにも施工コストも抑えられる工法でもあります。
疑問を投げかけると、あるいは何らかの欠点等を指摘すると少し極端に捉えてしまう方もいらっしゃるようにも思いますので、ここでもう一度述べてみた次第です。
また、面材工法自体は、ツーバイなどが代表されるように、耐震性に関してはある程度優れているということは、業界の人間ならばツーバイが普及し始めたころから誰もが認識していることでもあります。
短い文章ではなかなか上手く伝えることができません。
そのような事も考慮するためも含めて、皆様の関心のあるこのテーマをもう少し掘り下げてみたいと思います。
- さて、ダイライトに代表される面材はそれを留めている釘で力を支えています。面で力を分散させるものではありますが、この釘が非常に重要となっていることを認識してください。
- そのことは「適切な施工方法・釘の打ち方等」が重要となるということであり、また、釘の強度・長さ等の「釘そのものの性能」も重要だという事です。(釘の間隔の違いや長さの違いでも壁量が違ってきます)
- 適切な間隔で打って行き、テッポウの圧も弱くして釘がめり込み過ぎないようにしなければなりません。
- 構造用の釘は「CN釘」か「N釘」を使います。「NC釘(細いロール釘)」は細く構造的に弱いので使いません。
- なお、単純に抜けにくいのは「NC釘」の方です。「CN釘」などは構造的には強いですが抜けやすいです。それぞれ長所・短所等がありますので、適材適所を心掛けなければなりません。
- ※なお、これも誤解を招くかもしれませんので補足させてもらいます。
CN釘でも、ある程度の長さの釘は物凄く効いています。例えば90の釘などは凄く効いていて、且つ強度もありますので、密着力?は相当なものがあります。
ただ、40の釘などの短いものは強度はあるものの、長さの割に太すぎるためか、場所や打ち付けるものによってはかなり抜けやすい。
太短いので、木の繊維にあまり食い込まないような感じで、且つ、玄翁の手打ちの1打目で刺さりにくい扱いにくさの欠点(大したことではないのですが)があります。
- ※なお、これも誤解を招くかもしれませんので補足させてもらいます。
- 軸組の筋交いですが、これの欠点等も記述しておきたいと思います。
- また、筋交いで大きめの「節」があるところや物は、その部分が損傷を受けやすいです。
- 現在は筋交いプレート等の金物で補強しているのが標準ですが、大きな揺れが生じた場合、そのプレートを留めているビス部分(の木材)が裂ける、あるいはその部分が割れるような損傷を受けたりします。
(柱の部分の木が裂ける場合もありますし、筋交い側の木が裂ける場合もあります)
- 現在多く用いられている筋交いプレートは「筋交い その2」で例にあげたAタイプが多いですが、特にビスが端っこ過ぎるだとか施工方法が適切ではない場合は裂けやすいでしょう。
適切であった場合も裂ける可能性は十分あり得ます。
- 個人的にはAタイプの金物には疑問を持っています。仕入れコスト・施工コストともAタイプは有利な部分がありますので頻繁に使われているのでしょうが…
- また、筋交いの端が接合されている部分の柱のホゾがやられてしまう場合もあります。
- 筋交いが丈夫なサイズ、且つ、大きな揺れ・地震で接合部分が逆にきちんと外れずに長く負担が掛かった場合などは、柱側のホゾ周りがやられてしまう例もあります。
筋交い自体が座屈その他の損傷が起きないかわりに、他の部分に負担が掛かる例です。
- また、これも前記事から繰り返すことになりますが、桁等のつなぎ目の部分は筋交いを避けるか、あるいは筋交いを設けるのならば補強しなければならないところです。筋交いがあることでそのような部分にも構造的負担が掛かります。
- 個人的には面材だけでは心許なく、筋交いと面材を併用することをお薦めします(筋交い+構造用合板等の面材、あるいは筋交い+ダイライト等の無機質の面材)が、剛床などの床材で水平構面を考慮した上で耐力壁が有効に作用するようにし、金物の選定にも一考が必要かと思います。
- なお、これも何度も言ってくどいようですが、耐力壁はバランスよく配置し、柱の引き抜きの計算も適切な計算をしなければなりません。(面材を併用するのならばきちんと考慮に入れなければなりません)
- それと、筋交いを伴った構造体は、大きな揺れ・地震時等で建物全体の変形において上下方向の振れが若干大きくなります。大きな地震時に左右に揺れる(振れ・変形が伴う)のは当然ですが、左右のみならず、上下方向の振れも誘発してしまいます。(どの工法でも、ある程度の上下・左右の振れ・変形等はあります)
- 建物の外周側の桁等は、柱が多く存在するお陰で、成をあるていど経済設計することができるのですが、極普通の一般住宅のように経済設計しすぎて成をあまり小さすぎる桁等にはしないように、熟慮して桁の大きさを上下方向の振れ・突き上げ・変形等に十分耐えうるサイズを採用する必要があるでしょう。
- つまり、外周部の柱が多いことで、静止状態での上からの過重の計算で単純な経済設計をするのではなく、強い地震時での各場所の筋交いの突き上げ等で波打つような上下方向の振れに耐えうるような桁材等の寸法設定をする必要があります。
□現在の木造軸組在来工法について
- 現在の木造軸組在来工法の標準的な仕様としては、4寸の通し柱に3寸5分の管柱の構成が多いです。
- これがそもそも、甚だ疑問に思っていることです。
- 通し柱で4寸では胴差の掻き込み部分が大きく、柱の太さそのものが強度的に「まったく」足りていません。管柱が3寸5分では全体の強度と持ち合いの弱さがあり、また、上記で述べたホゾがやられてしまう一因でもあります。
- 「柱・梁・耐力壁」の記事でも述べていますが、通し柱は、4寸と5寸では強度にかなりの違いがありますし、さらに6寸から急激に強度は増します。
- 梁は撓み等を考慮して、大きく飛ばすところや上部柱や小梁の負担がある場合、梁成等もかなりのものになります。
- 梁等、あるいは胴差の大きさ、そのゴツさに対して柱(通し柱)が細すぎるのです。
大きな揺れ・地震時に、例えば非常に貧弱な釣鐘をそれに不相応な大きなゴツ過ぎる撞木で突くような現象が起きているようなものです。- 梁や胴差のサイズに比べて柱のサイズが分不相応であるのです。
双方のバランスがなってないまま、当たり前のようにこの構成が続けられてきました。
- 梁や胴差のサイズに比べて柱のサイズが分不相応であるのです。
- コストの問題は当然ありますが、せめて通し柱だけでも、もっともっと太いサイズを標準の仕様にするべきです。
そのコスト増は大きさにもよりますが、それほど酷いものではありません。また、その太い柱が標準となれば何時の間にかそれが当たり前ともなるものです。
- 木の資材の問題は深く掘り下げると森林等の管理のことなどにもかかわってきますが、そのような問題も含めて、このような細い柱を今まで長い間標準としてきたのは業界の怠慢であるし、経済設計のギリギリの狭間で仕方がない部分もあるかもしれませんが売り上げ至上主義が招いてきた結果でもあるのでしょう。
- 集成材が使われるようになってまだ歴史は短すぎるものではありますが、普及して多少の年数が経過しており、すでにある一定の信頼を得つつあります。
- 無垢の太い柱にこだわらないのであれば、集成の太い柱の導入はすぐにでも可能であるはずです。
(まあ、当サイト管理人は個人的には無垢が好きで、集成材は大変優れた製品ではありますが正直好きではないです……あくまでも個人的に感性として…)
- なお、筋交いは通常は3尺の幅の中に取り付けられている場合が多いですが、
これの縦横の比率が小さい場合等(例えば横幅が4尺5寸等や、あるいは短尺の高さの壁、等々)は、各々の接合部に掛かる応力・負担が大きくなると思いますので、柱そのものと、そのホゾの部分の強化、あるいは金物等の接合の仕方、並びに上記で記述した桁等の成等の検討(破壊を防ぐため、取り付け方法や形状その他の検討)と用心が、より必要となります。- 筋交いそのものにも、もちろん負担が掛かります。応力が大きい場合は、ものを太く堅牢なものにする等々、負担が掛かる部分のすべての部分の強化を検討する必要があります。
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- 筋交いそのものにも、もちろん負担が掛かります。応力が大きい場合は、ものを太く堅牢なものにする等々、負担が掛かる部分のすべての部分の強化を検討する必要があります。
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