筋交い その4 柱脚の接合 偏心率 水平構面等
■筋交い その4 柱脚の接合 偏心率 水平構面等
この記事も他のリンクで記載したことのおさらいでもありますが、あらためて述べてみようと思います。
- そのひとつに、
地震全てにおいてですが、特に阪神・淡路大震災の時のように縦振れも酷いような地震等で問題とされた、柱等の「ホゾ抜け」の問題があります。
- 筋交い等の耐力壁、壁等だけを強化しても、それだけでは事足りませんし、また、それらが「有効に作用」するためには、他の部分もきちんと考えられた施工がなされていなければなりません。
- 壁の剛性が高まっている近年の木造住宅では、柱脚の引き抜き力も高まっていますので、柱脚の接合力・接合強度も重要となっています。
- 阪神・淡路大震災等の大きな地震ではホゾ抜けが倒壊の原因のひとつとされる事例が多々ありました。
- この部分の金物等の強化は必要ですし、以前はこれがほとんど行われていませんでした。精々カスガイを打ち込んでいるくらいで、それすらもなされていない建物が多々存在しました。
- 筋交いや面材等も、このようなことがきちんとされていないと本来の能力は発揮できず、意味の薄いものとなってしまいます。
- また、水平構面のねじれ強度が確保されていないと、これも筋交い等の効力が十分に発揮できないものとなります。
- それと、何度も言っていますが、耐力壁等はバランスよく配置することが肝要です(実際には難しいですが…)。
- 建物の中心「重心」と、壁の強さの中心「剛心」の差(偏心)の程度(偏心率)が一定数以上の数値となった場合は補正(弱い所の壁量を増やして数値を一定数以内とする)をしなければなりません。
※偏心率(Re): Re=e/re
- 偏心(偏心率)は理想的には0が望ましいですが、ほとんどの建物はこれに差異があります。
地震力や風圧力が生じ、建物に水平力が作用した時に重心から剛心の差異に曲げモーメントが作用しますので建物のその階に回転が生じます。捻じれが起きるということです。
- これをなるべく起こさないように耐力壁等はバランスよく配置することが肝要になります。
偏心からくるその階全体の回転力・捻じれ等の考えだけでなく、単純に建物の場所により強さの差が大きければ、地震時等の揺れで建物の各場所がバラバラな抵抗をするという意味であり、平面的に見ても立体的に見ても、建物の各部分がバラバラな動き、あるいは抵抗をすれば建物全体が捻じれ・変則的な揺れ等を生じ、その捻じれはさらに耐力壁等の効力を低下させて倒壊しやすい状況に陥ってしまう事に繋がって行きます。
- また、水平構面の捻じれ強度も考慮して、耐力壁等が地震時等の水平力の作用に正常に機能するようにしなければなりません。
- その名の通り、水平・平面の部分の捻じれ強度を考慮します。水平構面は、梁・根太・床板(構造用合板等)・火打ち、等で構成されています。
(屋根は、母屋・垂木・野地板等で構成されている)
- 木造軸組工法の床の構成は、以前は転ばし根太を用い、その上に12mmの構造用合板を打ち付け、床材を張るというやり方が多かったですが、近年は根太を大入れにし、24mm以上の剛床(28mmを使っている業者も多い)を用いる工法が増えています。
- 垂直方向だけでなく、水平・平面の部分の強度を上げて、地震時等の時に水平方向に捻じれができるだけ生じないような構造とし、耐力壁等も有効に作用するよう心掛け、建物全体の強度を確保して行きます。
- 屋根の形としての水平構面の強度として強いのは、方形、寄棟です。
- 切妻や片流れは、構面としての捻じれ強度だけでなく、単純に横揺れにも弱いので、クモ筋交い等での補強はもちろんのこと、高さのある部分は天秤を施すなどの構造的な強い造りを心掛けなければなりません。
- しかし、勾配もある比較的大きな屋根で天秤等をなにも施さないまま、1階.2階の柱ほどもあるような長い束を林のように立てているだけの切妻や片流れの屋根等もよく見掛けます。
- 材料費の削減?のためなのか?何なのか分かりませんが、そのようなやり方は感心しませんし、個人的にはあり得ないです。 ですが、かなりの頻度で見ます……
百歩譲って、その分の屋根を構成する材料の全体重量は少しは軽くはなるでしょうが…
できる限り強く丈夫な建物を造るのだという気構えのある者であるならば、それなりの構造にするはずですし、しなければなりません。
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